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学校から出た途端、空は灰色に染まり始めた。
分厚い雲が風に乗ってここまで流されてきたようだ。
キミは立ち止まり、困った顔で空を見上げているがその手にはしっかりと傘が握られていた。
君に思いを寄せる僕は1歩近づき、折りたたみ傘をそっとカバンに隠す。
「ねぇ、今日傘を忘れちゃったんだ。途中まででいいから入れてくれない?」
できるだけ自然に声をかけた。
彼女は困り顔で僕を見る。
空からはもう少しで雨が落ちてきそうな気配があった。
「こめんね、これ、1人用の傘だから」
キミはそう言って、まだ降り出してもいないのに傘をさして歩き出す。
……振られたってことなのかな?
ショックで動けない僕の頭上から、大粒の雨が降り出した。
カバンから折りたたみ傘を出そうとした僕の視界に、前を歩くキミの足元が見えた。
雨に濡れるキミの足はそこだけ赤黒く変色している。
キミが僕の視線に気がついて振り向いた。
ひょいと肩を竦めて見せたキミは「雨に濡れるとダメなのよ。私、雨の日にトラックに跳ねられて死んだから、きっとあっちの世界へ引き込まれちゃうんでしょうね」と、何食わぬ顔で言ったのだった。
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