お悔やみ様

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「私の祖母の集落では、集落みんな一つの家族、という考え方でした。 もちろん困ったことがあったら気軽に助け合いますし、 誰かが亡くなると集落総出で葬式の準備をしました。 最近は知りませんが、私が幼少の頃は大きい樽のような桶のような… そんな物に死者を入れ、大人が数人で担いでお山の麓の土葬場に運ぶ習わしでした。 先頭にはお坊さんが歩き、名前は分かりませんが鈴のようなものを鳴らして… そこまでは古臭いけど普通の田舎の光景です。 葬式の様子を、私はボーと眺めていました。 そもそも集落の人間ではないですし、骨を拾うことも無かったので退屈でした。 【お悔やみ様】を川に流すよう祖母に言われるまでは… お悔やみ様というのは、死者が寂しくないよう供養する儀式だと説明されました。 自分の名前を書いて唾液をつけた人形(ひとがた)を、土葬場の脇を流れる小川に流すのだと。 大人が一斉に人形(ひとがた)をベロリと舐める姿は異様でした。 私は死者と一緒に自分の人形(ひとがた)を流すなんて、恐怖しか感じませんでした。 赤い人形(ひとがた)が次々と川を流れ、まるで血のようで…     
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