お悔やみ様

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私は流したフリをして、人形(ひとがた)をポケットに隠し、その場をやり過ごしました。 大人達にバレることなく、そのまま夜を迎えました。 父も母も弟もぐっすり眠っていて、私だけどうしても寝付けず… 水を飲もうと台所へ向かった時でした。玄関を叩く音が聞こえたんです。 もう家族はみんな寝付いているし、今日みたいに夜中に近い時間です。 私は最初風の音だろうと、無視して台所へ行きました。 水を飲んだら少しスッキリしたので、布団に戻ろうとまた玄関の近くを通りました。 すると今度は人の声がするんです。 「きしもとさーん…きしもとさーん…」って。 岸本って、母方の…祖母の苗字なんです。 こんな時間に本当に知り合いが来たのかもって思って、 慌てて祖母を揺すって起こしました。 「玄関でお祖母ちゃんを呼んでる人がいるよ」って。 祖母を玄関まで連れてくると、変わらず「きしもとさーん」って呼んでいて。 その声に思い当たったらしい祖母は、私に向き直って言いました。 「人形(ひとがた)を流さなかったね?」って… 驚いて、怖くて。ごめんなさい、と隠してた人形(ひとがた)を祖母に差し出しました。 祖母は「泣かないの」と人形(ひとがた)を受け取ると「布団に戻りなさい」と…     
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