虹色の水溜りが教えてくれる

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「虹色の水溜りが・・・それは・・・それは私たちを引き合わせてくれた神様に、感謝しなければいけませんね」 「私は美代子さんにも感謝しなければなりません。この町も、私が最後に見た景色とはすっかり変わっていました。そんな心細いなか、長い間ひとりで私を待って下さったこと、本当に感謝しています」 「確かに心細かったですし、博さんは帰って来ないんじゃないかと不安に思う事もありました。ですが私は、博さんとの最初で最後の約束を必ず守ってみせたかったのです。私はこの約束のおかげで、博さんともう一度逢うことが出来ました」 「そう言ってもらえて、なんて私は幸せ者なんでしょうか・・・美代子さんには話したいこと、伝えたいことがたくさんあるんです。ですが、これからは話す時間がいくらでもあります。早く一緒にいきましょう。お迎えの方に謝りに行かねばなりませんし、ここだと美代子さんが雨に打たれてしまいますが、あいにく私は傘を持ち合わせておりませんので」 「私も博さんにお話したいことがたくさんあります。ですがそう急がず、ゆっくり行きませんか。私、雨が好きになったんです。だから雨に打たれても平気です。それに私には ・・・私たちにはもう、傘は必要ありませんから」 「・・・そうですね。それではゆっくり行きましょうか」 「ええ。ゆっくり・・・ゆっくり行きましょう?」 私は博さんが差し出してくれた手を取りました。 探しものが見つかり、もう虹色の水溜りを探す必要はありませんが、私は虹色の水溜りに、探しものに出逢えたお礼をしたいと思いました。 見上げると空模様は相変わらずの灰色の空ですが、私の心は打って変わり、晴れ晴れとした気持ちでこの町に別れを告げることが出来ました。
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