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「I board it as scheduled. I'll confirm his boarding now」
(予定通り搭乗します。これから彼の搭乗を確認します)
女が発した言葉は流暢な英語だった。
8番搭乗口に着くと辺りを見回す女。しばらくゆっくりと歩いてから、近くの公衆電話に行った。
「I checked that. Is there my seat near him? ・・・ I understood」
(確認しました。座席は近くにしてあるんでしょ?・・・了解です)
と言い受話器を置くと、一人の男の後ろに付いて歩いた。背筋が真っ直ぐ伸び、グレーのスーツ姿で長身のビジネスマン風の男。四十代ほどか。落ち着いてはいるがどこかそれを装っているようにも見える。というのも手にしたアタッシュケースを何度も持ち替えたり、冷房が効いているにもかかわらず空いた方の手で時折額の汗を拭ったりする動作がそれを思わせるのだ。
機内は子供の声が多く賑やかであった。
窓側の席に腰を掛けた女はシートベルトを固定すると、ハンドバッグから手帳を取り出し何かを走り書きしている。時折チラリチラリと前列右前の座席に座っているその男を見る。二人は機体後部席に腰を掛けていた。
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