<四>

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<四>

 彼の指と腕、そして唇は我武者羅だった。焦りと熱、そして欲望。私は時々彼の腕を導き、指を絡めた。互いの熱をさぐり、触れ、手のひらに感じる確かさに震えた。  私は彼に、彼は私になりながらお互いに向き合う。触れ合う体温と熱、滑る汗。  私達は夢中になりながら息をあげた。とうとう引き裂かれるような痛みとともに彼を受け入れた時、頬にポタリと滴を受ける。彼は子供のように泣きじゃくっていた。 「どうして……どうして」    鈍い痛みをやりすごすため力を抜く。いくぶん息がつけるようになり彼の頬に手をのばし涙を拭った。 「手にしたのに離さなければならない。せっかく生まれたのに死ななくてはならない。自分の人生なのに選べない!学問の問題には必ず答えがあるのに、いくら考えても答えに辿り着けない。誰も教えて……くれない」  じわりと瞼が濡れる。どれだけ自分を守る鎧を身に纏ってきたのだろう。お国のためだと言い聞かせ、これが自分の命運だと受け入れた姿勢を保ち続けるのに、どれだけの……。  全裸で汗ばみ私の中にいる彼があまりにも悲しい。そして愛おしい。 「この世は答えのないことのほうが多いのだよ」 「でも‥…でも」 「だから答えはない。それが答えだ」  彼の腰に自分の足を絡めて引き寄せる。 「あ……」 「君が私の中にいる。今此処には私達しかいない。そうだろう?それだけでいい……今はそれだけで」  左右の手のひらを彼の臀部に置き強く押し付ける。 「動いて。私を感じて……私は君を感じたい」  緩やかに始まった抽出が熱を帯び始め、汗ですべる体をしっかり抱きしめる。答えはない、選択肢もない、何もかもがない。でも私と君は此処にいる。それだけでいいじゃないか……せめて今だけは。 「ああ……もう」 「我慢しなくていい……から」  深い口づけは呼吸を奪う。何もかも奪えばいい、与えられるものすべてを君に!     崩れ落ちてくる彼の重みを受け止めた時、堪えられず零れた涙がつたい耳を濡らした。
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