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庇のついているタイプのフードを被っているが、雨粒が容赦なく顔に当たる。路面は濡れて滑りやすく、雨で見通しも悪い。晴香はいつもより慎重に自転車を走らす。もし段差で滑って自転車がこけて子ども達が投げ出されでもしたら。自分のハンドル操作一つで2人の命が危険にさらされてしまうと思うと、ハンドルを持つ手にも力が入る。子育て中で大事な命を預かっていると実感する瞬間の一つだ。
信号をわたり、角を曲がると、保育園の門が見えてきた。あちらこちらから、ぞくぞくとカッパ隊が到着し、門の中に吸い込まれていく。母親たちはみな前髪が額にへばりつき、必死の形相だ。手早く子どもたちをおろして、園舎の中へ入っていく。
いつもは悠太は一人で荷物を持って、自分の保育室に行ってくれるので、亮太だけ保育室まで送るのだが、今日はレインコートを引き取らなければならないので、両方行く必要があった。それぞれの保育室で素早く脱がせて、子どもたちを預け、駅へ向かったが、いつもの電車は間に合いそうになかった。
「やっぱり、雨の日は嫌だ。」
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