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唖然というのは、こういうときの自分のような状態をいうのだろうと思うほど、俺たちはぼんやりとその去っていく背中を目で追いかけることしかできなかった。
しかし、数秒経って思考が冷静になってくると、こうも思う。
ああいう、何かに対して馬鹿みたいに一直線な奴がきっと自分の夢をかなえるんだろうな、と。
「結局、兄さんは大きい方が好きなの?」
「はい?」
頭の中で、そんな青臭いことを考えている最中だったためか、余計に隣から聞こえたその言葉にびっくりして呼吸までもが狂いそうになってしまった。
ふと隣を見ると、かなえが高城の走り去った後のほうを向きながら、顔を若干紅潮させていた。
「だからその…巨乳の方が好きなの?」
さっきのは聞き間違いじゃないだろうかというわずかな可能性が潰える。今度はちらちらとこちらに目配せをしながら、割とはっきりめな口調でそう言った。
「いや、別にそう言うわけではないけど」
「ふーん」
俺の返事をどう受け取ったのかはわからないけれど、明らかに機嫌がよさそうな感じではなかった。だって今、あからさまに睨まれたもの。女心と秋の空とはよく言うけれど、妹の心は何かに例えることも難しいほどよくわからないものである。
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