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俺のモットー
雨の日、俺は駅で待ち合わせをする。ファッションは暑すぎるのは勘弁だが、なるべくダンディーに、ビシッときめる。雨が降ったら特にレイバンのサングラスは欠かせない。雨の始まりは髪をオールバックにする合図だ。そして時折、手元の時計に目をやる。中々、待ち人は現れずという様子を演じている。
雨は突然であればあるほどいい。激しければ激しいほどいい。梅雨から始まるこのジメジメした空気と、うだる暑さ。その全てを一度で洗い清めてくれているかのような雨。
俺は愛してやまないのだ。この季節の雨を。今日も誰かが俺の元に来ることは無かった。しかし、今日もいいものが見ることが出来た。雨に濡れたブラウスとその先に透ける色とりどりの下着はこの季節の代名詞。俺からしたらエロのアートだ。明日以降も晴れからの突然の雨を期待しようと思う。
今日は休みだったから、朝は爽やかに紫陽花寺と呼ばれる明月院へ足を運んだ。本音を言ってしまえば、明月院へ行けば紫陽花目当ての女どもがやって来る。それが目当てだ。花より団子ではなく花より女子というのが俺のモットーだが、無駄な触れ合いは御免だ。女は魔物。隙を見せると何をしてくるか分かったものではない。適度な距離から、メガネやサングラス越しで見ている程度が丁度いいのだ。しかし、寺で出くわした女学生には驚かされた。まさか、俺の写真を盗撮していたなんて。慌てて無駄に愛想よく振舞ってしまった。何てことだ。俺は愛想笑いが大嫌いなのに。しかもあんな若い女相手に恥さらしもいいところだ。俺は今年で三十だぞ。まあ、起きてしまったことは仕方が無い。今日は駅前の喫煙スペースで一服して家に帰るとしよう。
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