告白と嘘

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告白と嘘

彼は私が近付くと、胸を押さえていました。きっと私と同様ときめいているのでしょう。どうしましょう。初めて運命の出会いをしてしまっているのです。 「あの、お名前は?」 名前を聞かれた。やばい、もしかして俺の名前を知って、このエロ変態行為を警察にばらそうとしているのか?写真も持っている。いや、しかしこの無垢な笑顔はそんなことはしないと言っている。しかし女に名前をばらすのは如何なものか。どうする? 「私は香月彩音といいます」 「齋藤栄慈といいます」あ!つられて言ってしまった・・・。 「エイジさんですね。素敵なお名前ですね」エイジなんてとてもダンディーな名前。素敵以外の何者でもない。エイジさん、エイジさん、エイジさん。うん、私はアヤネって呼ばれるのかな。アヤかな?どうしよー!とても楽しみでウキウキが止まりません。さあ、エイジさん、私に好きって言って下さい! 「えーっと、あなたもいい名前だね」何なんだこの子は?頬赤らめちゃって、チラチラ上目遣いでこっち見て。だから女ってのはよく分からん。どうする?どうすればいい?本気で困った・・・。 「えーっと、エイジさん、私に何か言うことが無いですか?」ほらほら、早く言っちゃいなさいよ!  やはりそうか。この女、俺をゆすっているのか。しかし名前をもう名乗ってしまった。身バレするのは時間の問題か・・・。 「ごめんなさい!」もうこれしかない!謝って許してもらおう! えー!嘘でしょ?全部私の勘違い?何なら私はまだ好きって言ってないよ? 「え、ちょっと、何が駄目だったのでしょうか?」 「いや、何がってもう言わせないで下さい!こっちが全部悪いんで!すみません!本当、勘弁してください!」俺が顔を見上げると、その子は目に涙を浮かべていた。やばい!通報される!「嘘です!」
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