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 少し首を傾けて言うのが色っぽくて、そのせいで何も考えられなくて、結局その時、友宏は答えられなかった。  俺も好き。  光司にそう言うことができたのは、全部終わってからの話だ。 ※  幸せなような、悲しいような気持ちで光司を呼んだ。呼んでも答える声はないのだと心のどこかで知っていた。空白のような小さい寂しさと共に目を覚まし、少しぼんやりして、現実の空気に覚醒した途端、感情が裏返ったようにめちゃくちゃに焦った。友宏は慌てて起き上がって隣を確かめた。  六月も下旬だというのに睦月は頭まで毛布に包まって丸くなっていた。かすかに聞こえる寝息にひとまず安堵する。光司の夢なんて初めて見た。慌てて確かめた下着はかろうじて無事で、それでも情けなくなって溜息をつく。部屋の中は湿度がこもって蒸し暑い。背中がじっとりと汗ばんでいた。焦って暴れる心臓を感じながら、とにかくシャワーでも浴びてこようと考える。ついでに抜いてこよう。今日は急いで準備しなければならない仕事もない。  隣の睦月は毛布だか人間だかわからない塊になっている。おそらくこの辺だろうと思われるあたりを少し捲ると、汗ばんだ寝顔が見えた。     
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