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 睦月はいつもこんな感じだ。マイペースというかぼんやりしているというか、下手にこちらを気にされない分、暮らしていて楽ではある。睦月も好き勝手しているが、友宏も勝手にしているのでお互い様だ。  光司もこんな感じだった。一緒に住み始めた翌日にはもう、友宏がいて当然みたいな顔をしていた。  睦月は両手でマグカップを持って、牛乳をちびちび飲んでいる。机に放り出されている紙をなんとなく見ると、模試の案内だった。あまりにもぼんやり暮らしているので忘れがちなるが、そういえば睦月は浪人生だ。 「お前、どこの大学行くの」 「う? えー……東大? かなあ」  半分寝ているような声で言われて驚いた。 「え、睦月ってあたまいいの」 「たぶん……。っていうか正直どこでもよくて、なら一番ランク高いとこ行けって」  東大狙いの浪人生、という言葉と、ぼんやりしている睦月はあまりにも結びつかなかった。友宏はそもそも受験なんて考えたこともないのでわからないが、受験生ってもっと切羽詰まってるものではないのだろうか。睦月はまるでやる気が感じられない顔でのそのそとペンを申込用紙に走らせる。 「ほんとは就職しよっかなって思ってたんだけど、大学行けってみんなに言われるし、お母さん再婚したし、父さんお金持ちだったから学費とか生活の心配もなくなったし……じゃあ、行っておいた方がいいんじゃないかなあって」  睦月は他人事のように言う。     
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