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 どこでもいい、と言いながらサラッと東大なんて言える頭を持っているのなら、周囲が進学を勧めるのはわかる気がした。  そういえば睦月はここに来るまで母親と二人で暮らしていたのだと思い至った。四十九日なんかで見た睦月の母親も、なんだかぼんやりした、お世辞にもしっかりしているようには見えない人だったし、母親と二人暮らしなら、それなりに思うところはあったのだろう。友宏も、光司に拾われる前の二年くらいは祖母と二人暮らしだった。姉が結婚して家を出て、祖父が亡くなり、祖母と二人の生活は、慣れてはいたが心配も沢山あったように思う。結局祖母は転んで脚を折ったので、いまは姉が暮らす神戸の老人ホームに移った。元のようには歩けない、と言われた祖母を、友宏一人で世話していくことはできなかった。 「お前、なんで初七日のときここに住むって言ったの」  睦月にも、似たような葛藤はあったのではないかと思った。自分ひとりしか男がいない状況で、女親と二人、というのは思うよりプレッシャーが強い。光司と暮らすようになってから友宏はそれを知った。光司との暮らしは楽だった。何しろ光司はでかくて頑丈で、多少転んだりぶつけたりしたところで祖母のように歩けなくなったりしないし、放っておいて構わないのだった。     
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