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※  デパートの十階の本屋でマミはエプロンをつけて働いていた。睦月が模試の案内を見せると不思議そうな顔をして、それでも手早く受け付けてくれた。 「なんでネット申し込みしないの?」 「これだけスマホじゃできなかったの」 「へー。今時そんなのあるんだ。私もうすぐシフト終わるから、その辺で待ってて」  小声で言われて適当に立ち読みをしていたら、三十分くらいでエプロンを外したマミが出てきた。十八時。館内放送が、食品セールを始めるから地下一階に来いと言っている。 「おまたせ。どこ行こう、その辺でいい?」 「人が少ないところがいい……」  夕方のデパートは下の階に行けば行くほど人が増えて息苦しい。梅雨の湿気と相待って、呼吸困難で死にそうな気がした。マミは、睦月らしい、と笑ってぐんぐん人混みを避け、睦月を近くのファミレスに連れ込んだ。  とりあえずドリンクバーを頼んだ。マミはバイト明けでお腹がすいたらしくハンバーグセットを選び、睦月は暑さと湿気と冷房で食欲がないのでスープだけにする。ぐったりしているとマミがドリンクバーから飲み物を持ってきてくれた。あったかいお茶だった。マミは優しい。     
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