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 マミがアイスティーを啜る音を聞いている間にハンバーグセットとスープが運ばれてきて、まだぐったりしていたけれど仕方なく体を起こす。梅雨は嫌いだ。夏も冬も嫌いだけれど、梅雨時は湿度で体も頭も全部塗りつぶされて息ができなくなる気がする。 「なんか、調子狂う」 「そうなの? いただきまーす」  睦月の独り言のような呟きを適当に聞き流して、マミは割り箸を割った。マミのこのドライな感じが好きで、睦月は高校の時からなんとなくいつもマミと一緒に遊んでいる。高校の時は割と女子の友達が多かったが、未だに付き合いがあるのはマミくらいだ。 「睦月、いつも変だけど、今日はすごい変だよ。早めの夏バテ?」 「いや……湿気で疲れるけどまだ大丈夫……なはず」  湿度で体はダメになっているけれど、ファミレスの席が良かったのか、弱い冷房で頭は少し持ち直してきた。それで、今朝の友宏を思い出した。  自分が隣で寝ていると、友宏はやはりしんどいのだろうか。  光司に似ている。友宏はたまに睦月の顔を見て言う。睦月に自覚はないけれど、友宏が言うならそうなのだろう。  寝言を詳しく聞き取れたわけではない。なにを言っているのかまでは聞こえなかった。しかし、何度か名前を呼んだ声だけは、しっかりと聞き取ってしまった。  光司。  名前を呼ぶだけであんなにも感情がこもるのだということを、睦月は初めて知った。     
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