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 恋人がいる、という生活を、睦月は知らない。友宏と光司がどんな生活をしていたかなんて睦月にはわからない。しかし、あのベッドで、睦月にはわからない親密さで眠っていたのであろうことだけは察することができた。たぶん、今朝の寝言はそういうものだった。いくら鈍い睦月でもわかる。恋人同士が同じベッドで寝ていたら、やることなんてひとつしかない。  今までだって、友宏が夜中や明け方に目を覚ましていたことはあった。泣いていたのを気づかないふりをして隣に寝ていたこともある。友宏が睦月の前で見せる弱さは外向けに加工されていて、お別れ会の日のような、誰に見せても構わないものだった。光司を失った傷は確かにそこにある。しかし、それにはきちんと包帯が巻かれている。少なくとも睦月にはそう見える。その下でどんなに血が流れていても、膿んで腐ってだめになっていても、睦月にはわからない。見せてもらえない。  睦月には、友宏の傷をどうすることもできない。 「恋人が死ぬって、どんな感じなんだろ」  呟くと、ハンバーグを食べながらマミがこっちを見た。言ってしまってからマミは光司と友宏の関係を知らないのだと気付いたが、マミは賢いから、今は追求してこないだろう。 「一年ちょっと一緒に暮らしてて、そんなのが死んでいなくなるって、どんな感じなんだろ」     
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