兄の恋人と一緒に暮らす

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　まずは手紙だけのものを仕分けする。ぬいぐるみなどの腐らないものは手紙と一緒にしておく。あとは主に消え物を取り出した。食品や花は禁止されているし事務所で抜いてしまうのでさすがに入っていないが、入浴剤やリップクリームなど、女の子が好みそうなものが結構入っている。こういうものはどんどん使っていかないと溜まっていく一方だ。貰い初めの頃は長く取って置いたが、きりがないので最近は貰った端から使っていくことにしている。大抵カードや手紙が一緒に入っているので、読んでから使う。個別の返事は出さない。ブログやＳＮＳでお礼だけ言う。俳優業なんて水物だし、いつまでこんなに応援してもらえるのかわからないから、きちんと受け取っているということをせめて伝えておきたい。
　手紙は時間があるときにゆっくり読むとして、消え物だけのものをざっくり部屋の入り口あたりに置いてスマホで写真を撮った。入浴剤詰め合わせみたいなのが入っていたので使おうと思う。ピンクのメッセージカードに『狭間友宏様　応援しています』とだけ書かれていた。差出人もないので誰だかわからないが、感謝の気持ちだけ持っておく。
　玉状の入浴剤を風呂に入れたら中からクマのフィギュアが出てきて驚いた。海外製に特有の強いスパイシーな匂いがする。クマは緑のハートを持っていた。上がってから箱を眺めると、裏に意味が書いてあった。緑のハートは友情運。友達に助けられるでしょう。
　テレビの部屋で髪を拭きながら消えないプレゼントの類――ぬいぐるみとかハンカチとかうちわとか――を並べて写真を撮ろうとしていると、睦月が帰ってきた。気が抜ける声でただいまー、と聞こえたので、おかえりーと言っておく。写真はあとでブログにアップしてお礼を言うので、綺麗に見えて無駄な生活感が出ないように撮ろうと苦労していると、手を洗った睦月が覗きにきた。
「なにしてんの」
「事務所から受け取ってきた」