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 落ち着かなくて、ソファに放っていたタオルでわざと乱暴に頭を拭いた。部屋の向こうにシャワーが流れる音を聞いて、睦月のことを考えた。  同じ中学に通っていた覚えはある。確か三年の時は同じクラスだった。クラスメイトとしての印象は正直薄い。その頃は祖父が亡くなったり今の事務所に入ったりで友宏自身も慌ただしかった。当時の睦月のことは、ほとんど覚えていない。  いつも眠そうな顔をしていた気がする。特に仲が良いわけではなかったが、まったく話さなかったわけでもない。葬儀の時思い出せたのは、ぼんやりした大人しい仕草と女みたいな見た目がかすかに記憶に残っていたからだ。睦月はいまも華奢で小柄で頼りないが、昔はさらに細くて小さかった。  光司も華奢だった。人混みで頭ひとつ抜けるくらい背が高いのに顔は女みたいに繊細に整っていて、それなのに仕草はがさつで大雑把で、そのアンバランスさが色っぽかった。濃く繊細な睫毛に縁取られた吊り目は少し眠たげな切れ長の奥二重で、高い鼻は筋が通り、薄い唇はいつも化粧品の広告みたいにつやつやだった。真っ白できめの細かい肌と相まって、バストアップの写真だと本当に女のように見えた。  睦月も似たような顔をしている。光司と違い表情があまり動かないので地味に見えるが、綺麗に整った繊細な顔だ。     
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