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 家の鍵を忘れた。睦月に連絡すると、運悪く出かけていた。 『いま友達と喪服買いに来てるからデパートまで来て』  簡単に返されて、仕方がないので言われたデパートへ向かった。家にまっすぐ帰るより少し遠回りだが、鍵を忘れた自分が悪い。言われたデパートの最寄りは死ぬほど混み合う駅なので、友宏は念のためマスクをつけた。風邪が流行る季節ではないとはいえ、稽古入りしているときに風邪を貰うわけにはいかない。  七月半ば、梅雨が明けたのに駅の中は恐ろしいほどの湿度だ。睦月は最近ずっと家にいた記憶があるので、久々の屋外にぐったりしているかもしれない。喪服を買うのも今日までずるずる延ばし続けて、昨夜電話でせっつかれていた。  あの日から、睦月は驚くほどいつも通りだった。あまりにも普通なので違和感を口にすることもできなくて、友宏もいつも通り睦月と過ごしている。先日次の舞台の稽古が始まったので、最近はあまり家にいない。  デパートに着くと睦月から連絡があった。 『サイズ直すのに時間かかりそう。七階のカフェに友達置いといたから適当に待ってて。たぶん友達が友宏見つけてくれると思う』     
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