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 見知らぬ人とカフェで時間を潰せというのもなかなか酷だ。行き当たりばったりすぎる、と思いながら、仕方なく了解の返事をしておいた。  平日昼間のデパートは年配の女の人ばかりだ。友宏は言われた通り七階のカフェに行く。見つけてくれる、とは言うが、そんな雑に説明されても困るしかない。  仕方なく入り口から適当に見回すと、奥の席で同い年くらいの女の子が立ち上がった。手を振るので近寄ってみる。椅子の上に睦月のリュックが見えて、この女の子が「友達」なのだとわかった。 「狭間くん? あの、初めまして。元村マミです。睦月から聞いてます?」  マスクを外しながら近づくと、女の子――マミは少し上ずった声で言った。どこかで見たことがあるような気がするし、名前もなんとなく覚えがある。睦月の友達に会ったことなんてないはずだが、人違いだろうか。 「狭間友宏です……睦月がここで待ってろって。……もしかして、どこかで会ったことあります?」  なんとなく人違いだという気がしなくて、マミを見つめながら考えた。マミは緊張したように真っ赤になって目を見開く。その表情に妙に重なる記憶があって、唐突に思い出した。 「あ、公演前イベントのハイタッチ会だ。去年の」 「え、え?! 覚えてるんですか?!」     
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