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「だって二日間あったのに両方午前も午後もきてくれて、だいたいラストの方にいたよね? あと手紙。毎公演初日と千秋楽で一通ずつくれる元村マミさん。ちょうど前の公演のやつこの間受け取って読んだとこで。いつも丁寧にありがとう」 「え、え?!」 「あ、そっか、睦月が一緒に見たって言ってた友達って」 「あ、あの、睦月に誘ってもらって、二階席で、えっと、その、ずっと、ファンです……すごく好き……です……」  マミが緊張した顔のまま俯いてしまったので、思わず仕事モードになった。 「ありがとう。そう言ってもらえるの、すごく嬉しい」  名前の字を思い浮かべて腑に落ちた。いつも同じシンプルな便箋に丁寧に書かれた「元村マミ」という名前に覚えがあった。そういえば睦月が以前言っていた気がする。ファンクラブ会員番号一桁の友達。  突っ立っていたらマミが先に頼んでいたらしいコーヒーが運ばれてきた。ついでに友宏は自分のものも注文する。マミはうろたえたことを少し恥ずかしそうにしながら座った。 「ごめんなさい、人前なのにテンション上がっちゃって……。睦月とは高校でずっと同じクラスで、たぶん私が舞台とか好きなの知ってたから誘ってくれたんです」 「そうなんだ。あ、敬語いらないよ。歳、一緒でしょ」 「へへ、じゃあ、そうする。なんか緊張するけど」     
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