3

5/71
前へ
/274ページ
次へ
「ごめんね。でも睦月って変な子だから、高校のときあんまり男子といるとこみたことなくて。女の子の友達は結構いるんだけど、男の子同士でいるのって珍しいから。で、睦月ってあんなんだし」  親しげな声とは裏腹に、言葉遣いのひとつひとつに注意深く選んだような慎重さが感じられた。 「この間会った時、なんか変な顔してたからちょっと心配だったの。睦月ってもともと夏バテしやすいから、この時期はいっつもぐったりしてるんだけどね」  友宏のアイスコーヒーが運ばれてきた。マミはそれでようやく目の前の飲み物に手をつけた。 「睦月、どんな子かなあ……優しい子だよ。ぼんやりしてるけど、あれ、理由あって。睦月ってあんまりよく眠れないんだって。なんか、昔からまともに睡眠時間取れたことないみたいで、必ず夜中に目が覚めちゃうって。だからなんかずっと眠そうでしょ」 「え、それ初めて聞いた」 「ほんと? たぶん、聞いたら話してくれるよ。授業中とかも結構寝てたけど、成績めっちゃくちゃ良かったから先生もあんまり怒れなかったみたい」  朝起きて、食卓に突っ伏して死んだようになっている睦月を思い出した。妙な体質だと思っていたが、眠れていないのだとは思わなかった。睦月はいつも静かだし、ベッドに入ってしまえば大抵朝まで大人しい。     
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

932人が本棚に入れています
本棚に追加