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気が抜けるような声とともに何度かシャッター音が鳴って、無表情にカメラを見つめる睦月と、真っ赤になって恥ずかしそうな顔をしているマミと、いつも通りだが少し驚いた顔の友宏がスマホの中に収まった。
「はい、返す。写真、付き合ってもらったのになんかずっと待ってもらっててごめんねのきもちだから」
「俺のこと便利に使うなよ」
マミにケータイを返しながら言われて、思わず突っ込んだ。マミは茹で蛸みたいになって慌てている。
「ちょうどいいじゃん? マミ、友宏のファンクラブ会員九番だってさ。古参って言うんでしょ」
「うえ……家宝にする……します……」
「うちに来たらいるよ? 仕事ない日は」
「違うもん……そういうんじゃないもん……でも大事にする……」
睦月が来てすっかり気が抜けたのか、マミはふにゃふにゃになってしまった。スマホを胸に抱えて黙ってしまったので困る。睦月がぼんやりと「おれもなんか飲んでいい? 試着で疲れた」と言って勝手にカフェラテを頼んだ。そういえば、喪服を買いに来たはずなのに睦月は手ぶらだ。
「睦月、買ったやつは?」
「裾上げとかに二週間だって。なんかサイズなくて大変だった」
「そんなに?」
「ウエストのサイズがなくて。すごい高いブランドの取り寄せればあるみたいなんだけどもったいないし、結局普通のやつめちゃくちゃ直してもらうことになった」
「お前そんなに細いっけ」
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