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 夜中は記憶が曖昧になる。夢と現実がごちゃ混ぜになって、自分がどこにいるのかわからなくなる。  起きなくてもいいのだとわかって、体の力を抜いた。  夜中に目が覚めると体が重い。頭も濁るし、首の後ろが鈍く重くなって頭痛もする。それを無理して起きだすのはつらいから、母が帰ってこない夜はいっそ眠らないほうがよかった。夜中に駅や繁華街に迎えに行くことになるか、帰ってきたところで朝まで話に付き合うのだから起きているほうがマシだ。彼氏に捨てられて泣いているか、デートの話を聞くか、愚痴を聞くか。どれにしても母は睦月に洗いざらい話し終わるまで眠らない。  付けっ放しのテレビの前で、青白い顔でぼんやりと泣く母を思い出した。気配に起き出した睦月が隣に座ると、母はいつもぼそぼそと話し始めた。だめだったの。むっちゃん、ごめんなさい。お母さんまた振られちゃった。     
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