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 光司と暮らし始めたとき、友宏は光司に連れられてこの父親に会いに来た。挨拶、というより、光司はごく単純に会わせたかっただけのようで、おれの恋人、とあっけらかんと父親に言ってのけた。当たり前だが父親は大いに驚いて、しばらく黙ったあと友宏に真面目に聞いた。本当にいいのか。父親の僕が言うのもなんだが、こいつ見た目よりずっと頭悪いぞ。顔に騙されてないか。早まらないほうがいい。  友宏の隣で光司は大笑いしていた。友宏は光司の父親の勢いに面食らって、そのあと馬鹿らしくなって笑ってしまった。騙されたもなにも、光司の存在自体わけがわからなかった。いきなり現れて、家に引きずり込まれて、友宏には拒否しようがなかったのだ。出会った瞬間から光司のことが好きだった。光司はわけがわからないやつだったけれど、断ろうとか拒否しようなんて思いはまるで感じたことがなかった。     
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