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必死に言った。睦月に流されたくはなかった。目の前にいるのは光司ではない。いま友宏を抱きしめているのは睦月で、速風光司はもうどこにもいない。
「お前、睦月だろ。光司じゃないのに、どうして」
背中を淡く叩いていた手が降ろされた。互いの胸の前に光司の骨を持ったまま、睦月が黙る。
睦月と光司の性格は全然違う。見た目に血の繋がりを感じることはあっても、声も、仕草も全然似ていない。光司は大雑把で身勝手に優しかったが、睦月は細やかでさりげない思いやりをくれる。光司は表情豊かでうるさかったが、睦月は無表情で大人しい。纏う空気も、体温も、なにもかもが全然違うのに、どうして睦月はこんなにも光司になれてしまうのだろう。
この喪失を、光司がいない現実を、睦月で埋めることなんてしたくないのに。
「じゃあ、おれは、いまから光司でも睦月でもなくなるよ」
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