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なにが睦月をそうさせたのかはわからない。マミから聞いた話からなんとなく察することはできても、それ以上を詮索しようとも思わない。ただ、睦月自身を見つめていたのは光司だけだったのだろうという思いが強くなった。こんなにも器用に自分を無くし、他人の生活に溶け込む睦月が、光司の前でだけは当たり前に睦月として扱われた。そんなのが急に死んで、放り出されて、睦月だって、平気でいられるはずがない。
光司の隣は何より甘かった。甘やかされて、大切にされて、きっと睦月だって、光司に幸福な期待を抱いていたのだ。
「睦月。お前だって寂しかっただろ。最初に言ってたよな、光司と、仲良くなれるって思ってたって。だからここに来たんだろ」
睦月は呆然と友宏を見つめた。睦月のなかで何かが固まるのを、友宏は待った。睦月は何度か瞬きをし、何かを言おうとして口ごもり、俯く。
「なんか、おれ、光司が死んだっていうの、よくわかんなくて」
胸の上に零された言葉は、幼く震えていた。
「あんまりおれには影響ないかなって思ってたんだけど、なんか、変で。友宏におれは必要だと思ったんだけど、お母さんの時ほどうまく代わりになれないし、光司はいないし、友宏はひとりだし」
睦月が大きく息を吸った。泣くのを堪えているように見えた。友宏はただ待ってやる。睦月が黙って傍にいてくれたように、ただ、待つ。
「おれが、こんなにわかんないのに、友宏が辛くないわけない……」
その言葉は、もう誤魔化しようがないほど涙に溺れていた。子供のようにしゃくりあげて、睦月は呟く。
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