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「だって、おれは光司にはなれなかったんだよ。友宏は気付いちゃうでしょ。友宏は、ちゃんと、傷ついて、泣いて、それなら、おれなんていなくていい」 「……睦月、ありがとうな」  しやくり上げる睦月を抱きしめてみた。光司が生きていたらそうしただろう。泣きたいだけ泣かせて、言いたいだけ言わせて、全部受け入れてくれる。  速風光司はもういない。あの大らかさは求めてももうどこにもない。睦月が光司の包容力を求めても、この家に、もう光司はいない。  速風光司は、もういない。 「俺、ずっとお前に甘えっぱなしだったよな。交代しよう、睦月」  睦月が腕の中で堪え切れない泣き声を上げた。泣きすぎて強張る肩を抱いて、子供にするように背中を叩いて、友宏は、睦月が落ち着くのを待つ。 「嬉しかったんだよ。光司と会って、兄弟だって言われて。変な奴だって思ったけど、光司は、笑ってて」 「うん」 「馴れ馴れしくて、道端でも抱きついて来て、なんだこいつって思ったけど、嬉しかった」 「うん」 「家族だって言われて、嬉しかったのに。もっと、話したり、遊んだり、したかったのに」 「うん」 「なんで、死んじゃうんだよ……ばか……」     
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