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 胸の上で睦月がかすかに笑った。滅多に笑わない睦月が、吐息程度とはいえ声に出して笑うのは聞いていてもどかしい気がした。きっと睦月には届いていない。鼻で笑うような声が、「そんなことどうでもいいよ」と言っている気がした。  睦月に気づかれないように、慎重に深呼吸した。睦月のことだから、このままだとさりげなく流されて、また日常に戻ってしまう気がした。聞かなければならないことがある。ずっと気になっていて、今日まで聞けなかったこと。ついさっきでさえ、流されそうになってしまったこと。 「なあ、睦月」 「ん?」 「お前、俺のこと好きなの」  好きでもなんでもない同居人に、そうそうキスなんてできるものだろうか。  睦月にキスされたのは一度ではない。ただ光司になろうとしただけなのか、それとも、無意識のなにかがあったのか。 「……たぶん」  少し考えてから、睦月は簡単に答えた。 「友達とか、同居人とかじゃないと思う……。いまちょっと考えてみたけど、おれ、友宏がファーストキスだった」 「は?!」  しれっと言われて思わず大声を出した。睦月がうるさそうに身じろぎして起き上がる。 「おれだっていま気づいたよ……。光司、ほんとずるい。友宏が光司のものなの、おれにはもうどうしようもないし」 「なに、それ」 「言われて気づいたけど、なんでもない相手にキスとかしないし……。うわー……光司ほんとずるい……なんで死んだんだよ……」     
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