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 睦月は自分のことを全然考えない。自分の心の守り方を知らないのだと思う。そんな危なっかしい相手が、自分の前では心を開いたように微笑んでくる。  守らなければと思った。  自分になら、睦月が潰れる前になんとかできるだろうと思った。  睦月がしてくれたのだから、自分にだってできるはずだ。  それでも、いままでのように睦月の顔を見つめることはできなかった。  キスをするだけで息ができなくなるような幼い相手を、これまでのように見つめることなんてできなかった。 「あー……これ、明日起きたらすっげえ顔合わせづらいやつだ……」  黙っていられなくて呟いた。 「いいんじゃん?」  睦月が笑みを含んだ声で言う。 「毎日一緒なんだし、慣れるでしょ」  なんでもないことのように言われて、それもそうか、と思った。  二人で立ち上がって玄関に落としたままの光司の骨を拾いに行った。床に落ちた飴の缶の中身は一応無事で、そのまま光司の部屋に持って行った。観葉植物で温室のようになっている光司の部屋は、睦月の手で綺麗に保たれている。濃厚に漂っていた光司の気配も、いまはもう別のものになりつつある。  光司の写真と香水瓶が置かれているソファに、骨を置いた。  そこに座って雑誌をめくったりしていた光司の姿が思い出された。     
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