プロローグ

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 思い出しても五回しか会ったことがない。光司は優しかった。いつも笑っていて、上機嫌で、睦月を見つけると子供のようにくっついてきた。最初は人懐こい犬みたいだと思って、街中を連れまわされたときはライオンの王様みたいだと思った。光司は華やかだった。  家族になるんだと思って、嬉しかった。五回しか会ったことがなくても、睦月は光司のことが好きだった。  でも、光司はもういない。 ※  学校に連絡したり友達に連絡したりしているうちに、初七日はあっという間に訪れた。それでも葬儀よりずっと楽だった。父が住む高層マンションの一室に移された祭壇の前に、お坊さんと少しの親しい人を呼んだくらいだ。色んな面倒事は伯母が片っ端から片付けてくれた。母はこういうときまるで役に立たないし、父も疲れていたので、自分がなんとかしなければと思っていた睦月は助かった。  長居をする人もいなくて、午後にはもうすべて済んだ。睦月は友宏を見つけて隣に座った。やはり友宏は一人ぼっちだった。 「帰る前にお茶でも飲んで行きなよ」  なんとなく友宏はあっさり帰ってしまいそうな気がしたので、睦月は友宏を引き止めた。父もそうしたがっていたし、母と伯母もそうだった。睦月と友宏は同い年だから、やはり心配なのだろう。     
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