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 甘えるだなんてそんな器用なこと、睦月にできるとは思えなかった。下手に考えさせれば、また睦月は誰かになるのだろう。友宏が甘やかしやすいような誰かを見つけて、なり代わる。 「友宏と光司って、似てるよね」  思いも掛けないことを言われて、思わず睦月を見下ろした。 「光司も言ってた。なにしたらいいのって聞いたら、なんにもしなくていいって」  その時の光司が見える気がした。睦月のちっぽけな疑問なんて、光司は簡単に笑い飛ばしただろう。光司は言葉が足りないから、その時の睦月にはきっとわからなかった。なにもしなくていい、の本当の意味が。  そこにいるだけで愛されるだなんて、本当は、当たり前にあるはずの幸福の一つだ。  光司はきっと、目の前の睦月をただ好きだった。弟に会えたのが嬉しくて、仲良くなりたくて、きっとしつこく話しかけたのだろう。睦月は戸惑ったに違いない。  ただいてくれるだけでいい。友宏も、光司にはよくそう言われた。  一緒に暮らしていた友宏には、その意味がちゃんとわかっていた。そこにいるだけでいい。それだけで十分に嬉しくて幸福だ。光司が傍にいて幸せだった。きっと光司も、友宏が傍にいて幸せだった。 「恋人って似るんだね」     
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