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「普通じゃない? 友宏だってできるでしょ」
「……あれが普通だったら俺の仕事なくなるんだけど」
あまりにも簡単に言われて少し悔しくなった。光司の代役を振られて苦しんだことが思い出された。一年以上一緒に暮らしていた友宏でも、あんな風に光司の仕草や話し方をなぞったりできない。兄弟だから顔や骨格が似ているというのはあるにしろ、表情や声色まで簡単になりきってしまう睦月は恐ろしかった。
きっと睦月は光司ではなく、友宏が望む光司を見ていたのだろう。
他人が望むものになってしまう。それは、友宏のような仕事をしている人間からすれば得難い才能だ。
「まあ、暇だし……話だけ聞いてもいいけど」
名刺を眺めながら、睦月はぼんやりと呟く。
「俺、今日事務所に用事あるから、社長見つけたら言っておくわ」
言うと、睦月はぼんやりと頷いた。
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