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 隣の友宏の気配が一気に緩んだ。 「社長……なんすかこれ」 「イケメンと猫。イケメンと猫を映すだけの三十分番組。ネット配信だけだけど人気なんだぞこれ。お前来月出るから雰囲気掴んどけ」 「え、あ、はい」  画面の中では光司がパジャマの胸の上に仔猫を乗せて撫でていた。光司がなにか囁くたびに仔猫が律儀にみゃー、と鳴く。光司の長い指先にじゃれつく猫を見ながら、睦月もなんとなく力が抜けた。  そのまま光司の仕事をいくつか見せられた。  猫と戯れる光司。ネットTVの若者向けバラエティで『彼氏にされたい十個のコト』を実演させられる光司。ファッション誌の撮影で女のモデルと写真を撮られる光司。光司の仕事はどれも若い女の子を意識したもので、光司を映すカメラはいつも恋人の距離にいた。  隣の友宏を見ると、無表情を装った顔をしていた。  何も言われたくないだろうと思って、睦月は黙っていた。  雑誌のインタビューを受ける光司がカメラに映る。放送するためのものではないらしく、画像が荒い。 『デートねぇ……そういえば日本に来てからまともにデートってしたことないかも』  画面の中の光司は何かを思い出すような顔をする。     
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