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『行きたいとこ? 恋人と一緒ならどこでもいいなあ。だっておれ、トモと家にいる時間が一番好きだもん。……え? あ、ごめん仕事だったこれ! 今のナシ! いい感じに書き換えといて!』  インタビュアー相手に光司が笑う。 『最近は家の中の方が好き。ずっとくっついてられるし、ハグしてもキスしても怒られないし。外でやると怒られるもん』  隣で友宏が落ち着かなげに姿勢を変えた。社長は黙ってスクリーンを見ている。 『スキンシップ多めかも。ちがうってスケベじゃないって、だってくっついてたほうがハッピーじゃん。せっかく傍にいられるのに』  光司は穏やかに笑っていた。 『いま? 幸せだよ。怒られるから理由はヒミツって書いておいて』  そこで、社長は唐突に映像を止めた。 「友宏、お前そろそろ下で来週の打ち合わせあるから降りとけ」 「うす」  時計を見ながら社長が言って、友宏は返事をして立ち上がった。 「じゃ、終わったら待ってるから」  感情を隠した目に見つめられて、睦月はただ部屋を出て行く友宏を見送った。  友宏が扉を閉めたのを確認して、社長は睦月に向き直った。無遠慮に見つめられて、緊張する。 「さて、睦月くん、いま見て貰ったのは光司の仕事だけど、興味ある?」 「いえ、まったく」  睦月が素直に答えると、社長は苦笑した。 「予想はしてたけど、素直だなあ。じゃあ、僕がどうして君に声をかけたかわかる?」     
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