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「光司に顔が似てるからじゃないんですか」 「それももちろんあるけど、もっと別の理由があるんだよ」  社長はタブレットを操作し、画面に光司の写真を数枚出した。どれも雰囲気が全然違う。子供のような笑顔でカメラを見つめているものもあれば、はっとするほどの色気を匂わせて視線を外したもの、眉間に皺を寄せて不機嫌そうにこちらを睨みつけているものもあった。かと思えば、リラックスした穏やかな顔で優しげに見つめてくるものや、お酒の瓶を片手に悪い顔をしているものもある。 「これはね、ほとんど全部同じ日に撮影したんだよ」  社長が呟いた。 「台詞や動きがないから分かりづらいかもしれないけれど、一日の間にここまで雰囲気や表情を変えられるのは光司の才能だ。スタッフやカメラマンの手助けはあっても、普通はもっと時間をかけざるを得ない。でもね、光司は一瞬で、 無邪気な子供の顔から大人の男の顔まで変われる人間だった。コンディションの調整とかがまったくいらないタイプでね。これ、よかったら持って帰ってご家族にも見せてあげて」  社長は傍に置いたクリアケースからカレンダーを取り出した。何枚かめくってみると、光司がこちらを見つめている。 「君も、同じことができるんじゃないかな」     
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