1

1/54
前へ
/274ページ
次へ

1

 睦月がリュックひとつで待ち合わせの駅に行くと、迎えに来た友宏は驚いた顔をした。 「荷物少なくね?」 「そんなに必要なものってなくない?」  ぼんやりしている間に高校の卒業式も済んで、アパートの契約切れが迫っていて、慌てて引越し準備をした結果だった。睦月はもともと持ち物が少ない。家具も家電も一通りあるところに引っ越すのもあって、本当に服くらいしか持ってきていなかった。それさえダンボール箱二つといま背負ってる普通のリュックに収まった。ダンボール箱は少し前に送ってある。 「荷物、とりあえず光司の部屋に入れといた。空いてる部屋なかったから、そのまま使えば」 「ありがと。あとでコンビニとか教えて」  友宏と光司の家は、都心から少し外れたところにあった。駅から徒歩十分、周囲にコンビニやドラッグストアもあって、立地としては充分だ。     
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

933人が本棚に入れています
本棚に追加