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 床は全部フローリングだったが、たぶん元は和室だったのだろう。襖は全部取ってしまったみたいで、それぞれの部屋には暖簾みたいな布が掛かっていた。元は手前から四畳半が四つに六畳がひとつだったのを、奥側の四畳半の間の壁をぶち抜いて一部屋にしたようだ。「テレビとか置いてる部屋」にそんなような柱がある。つまり手前から四畳半、四畳半、九畳、六畳。たしかに、元は下宿っぽい作りだ。  使っていい、と言われた光司の部屋に入ると、緑色の小さめのソファがど真ん中に置いてあった。アジアっぽい柄のラグと、廊下にあったのと同じ巨大な観葉植物が数鉢。その隙間にたぶん服が入っている木製の引出し。床に服とか靴下とか帽子とかが「ちょっとおしゃれしようとして手間取りました」という感じに散らばっていて、友宏が、光司の部屋に何も手をつけていないことがわかった。  部屋の隅にダンボールが居心地悪そうに積んであった。少しの服と私物くらいしかないとはいえ、この観葉植物まみれの中のどこに置こう。  更に困ったのは、この部屋のどこで寝ればいいのかまるでわからないところだった。ベッドも布団も見当たらないし、押し入れは改造されて服がたくさん掛かっている。光司はどこで寝ていたのだろう。  とりあえずマフラーとコートを脱いでその辺に置いた。荷物の整理をしようにもそもそも部屋が散らかっている。勝手に触るのも気がひけるし、友宏が触れなかったものを自分がどうにかしていいのかもわからなかった。聞こうとして友宏を探すと、奥の方からうがいをする音が聞こえた。洗面所の方だろうか。     
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