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「歯ブラシとか持ってきてる? 買うなら近所にドラストとかあるからついでに教えるけど」 「あー、うん、買う」 「ついでにメシなんとかしようぜ。ちょっと腹減ってきた」  友宏は何も気にしていないのか、食堂に行って小さい財布を持ってきた。 「これ、食費とか光熱費とか入れるやつ。折半だったから」 「そのへんあとで細かく教えて。ごはん、冷蔵庫になんかあるなら、おれ適当につくれるけど」 「あー……、しばらくメシ食ってなかったから、中身だめになってるかも」  友宏は言って、ちょっと頭を掻いた。 「なんか、忘れてて。しばらく仕事以外に出てなかったし」 「友宏って普段なにしてるの」 「なにって……仕事。ムラあるけど」 「俳優?」  仕事と聞いて、そういえばそんなことを言ってたな、と思った。 「舞台あったら一ヶ月くらい忙しいし、スキマ空いてたら一週間くらいオフだったり。最近は週一でネットのレギュラー配信あるし、単発の取材とかいれたら、まあそれなり」  聞いても全然見当がつかなかった。俳優なんて睦月はテレビや雑誌でしか見たことがないし、舞台もブロードウェイとか宝塚とかしか知らない。 「しばらく忙しいかも。光司がやるはずだった仕事とか回されると思うし、舞台決まりそうだし」     
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