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「舞台で光司の代役が決まりそうで。光司細かったし、役的にも細身の華奢なやつだから」  友宏は言ったが、睦月の目にそれは言い訳に聞こえた。絞らなくてはいけないから食べないのではなく、食べられないのだと思った。食事が喉を通らないくらい、友宏は追い詰められている。 「来週から忙しくなるから、全然家にいないと思う」  ある朝、出がけにそう言った顔が真っ白で心配だった。 「いってらっしゃい。がんばって」  それでも他に言えることがなくて手を振ると、友宏は少し笑った。無理をしているような笑顔が見ていて辛かった。  引っ越してきてよかったのだと思う。  睦月がこの家にいれば、倒れたりする前に、無理にでもなんとかすることができる。  思い立ってスマホで友宏の名前を検索した。 『狭間友宏 俳優』  事務所のプロフィールページが出てきた。リンク先に『速風光司』の名前もあった。  狭間友宏。十八歳。身長一七七センチメートル。過去の出演作はこちら。  速風光司。二十二歳。身長一八四センチメートル。過去の出演作はこちら。  二月十三日に永眠されました。彼の冥福を祈ると共に、深い感謝を捧げます。  速風光司はもういない。  プロフィールページの友宏の写真は、今よりずっと健康そうだった。 ※     
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