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「事務所主催の光司のお別れ会あるけど、来る?」  ある日帰ってきた友宏が、玄関先で突然言った。 「いつ?」 「明後日」 「急だね」 「ごめん、言うの忘れてた。多分親父さんとかには連絡行ってたと思うけど」  写真の許可とか取らなきゃだし、と続けて、友宏はスマホを見る。 「場所はここ。えーと、十六時からか」 「友宏いくの」 「俺は挨拶とかあるし、事務所側で参加する」 「おれも行くよ。あ、でも喪服ない。高校の制服なら実家にあるけど」 「まだ三月だし、いいんじゃねぇの。気になるなら俺の貸すけど。俺その日は事務所が用意してくれるし」 「サイズ合わないと思う……おれの方がだいぶ身長低いし、裾余るでしょ」  いいよ、明日実家行って取ってくる、と続けて、友宏の高校が気になった。 「友宏、高校どこ行ってたの」 「俺? 通信制」  話しながら友宏は洗面所に消えて、長いうがいの音と手を洗う音が聞こえてきた。  お別れ会の日は雨だった。  高校の制服でふらっと行き、受付で名前を書くと、受付の人が急に声をかけてきた。 「速風睦月さんですね。申し訳ありませんが、少々こちらへよろしいでしょうか」     
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