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 友宏が缶コーヒーをくれた。開けて飲んだらブラック無糖でびっくりしたが、折角くれたので頑張って飲んだ。睦月はブラックコーヒーが飲めない。隣ですいすい飲んでいる友宏を見て、大人だな、と思った。  コーヒーを飲み終わった頃に、葬儀の席で見た男が現れた。手際の悪さを謝られながら男に関係者席の一番後ろに連れていかれた。友宏は男を「社長」と呼んだ。  会場は静かで、葬儀で見たような祭壇にやはり光司の写真が飾られていた。ホールの壁には光司の写真がたくさん飾られて、ムービーもいくつかリピート再生されている。青の前を光司の仕事関係者だと思われる人たちが涙目でうろうろしていた。彼らは関係者席の最前列に座った友宏を見つけると、決まって声をかけた。友宏はいちいち立ち上がって律儀に頭を下げていた。 「落ち着かなくてすまないね」  睦月を座らせて一度どこかに消えていた社長が、いつの間にか隣に立っていた。 「いえ。友宏と光司のこと、皆さん知ってるんですか」 「知ってるのもいるし、知らないのもいるだろうね。光司は口が軽かったし、隠せって言ってなかったから、大概知ってるんじゃないか」  いま友宏と一緒に住んでるんだって、と聞かれ、睦月は頷く。 「君はいま浪人生?」 「はい。光司の葬儀と受験日が被ったので」 「そうか……」     
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