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 電話口で社長が安心したような声を出した。こんなになってまで仕事に行きたがる友宏の舞台を、見てみたいと思った。睦月は友宏の仕事を知らない。光司が見つけて大事に愛した狭間友宏という俳優を、全く知らない。 『そのうち友宏に持たせるよ。本当に、今日はありがとう』 「いえ、あの、よろしくお願いします」  電話を切った。そのまま電話を食堂の机に置いて寝室を覗くと、友宏は大人しくしていた。睦月は布団にすまきになった友宏の隣に横になって、布団の上からちょっとくっついた。耳をすませると、寝息なのか起きているのか微妙な呼吸が聞こえた。睦月がくっついても黙っているから、たぶん、寝たのだろう。それか、なにか言う元気もないくらい疲れているのか。  しばらくそのままくっついていた。高校時代、女友達の元気がないときにしてあげたように、黙って腕を回した。そうされると安心すると聞いたことがあった。  しばらくすると、深い眠りに入ったような呼吸が聞こえてきた。 ※  背中が温かかった。久々に感じるような重みがずっと体にかかっていて、光司がまた盛大に寝返りを打ったのか、と思ってぼんやりと目を開ける。そうしたら光司の気配はどこにもなくて、ああ、そうか。と納得しながら友宏は一人で起き上がった。まだ日が高い時間の、ぽっかりと間が抜けたようなあかるい気配がする。     
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