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「ねえちゃんから。いま神戸にいて、旦那さんがパティシエだから毎年作ってくれる……」  箱を開けると白いケーキが入っていた。ハッピーバースデー、とデコレーションされていて、数字の1と9のろうそくとカードが入っている。誕生日おめでとう。お姉ちゃんより(解凍は冷蔵庫で半日)。カードの下には姉の夫と祖母の名前も書かれていた。 「お姉さんと仲良しなんだ」  カードを覗き込んだ睦月が言う。 「うん……まあ、ばあちゃんと一緒に育ててくれたようなもんだし、俺がいま俳優できてんのもねえちゃんのおかげだし」  中学三年の頃に、突然姉に今の事務所に履歴書を送られていたのだった。勝手にオーディションを受けることになっていて、流されるまま受けて社長の目に留まった。それから色々な幸運が重なって、友宏はいま俳優として生きている。 「友宏ってご両親いないんだっけ」 「うん。すっげぇ小さい時に死んだから、顔も覚えてないけど」     
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