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 マミがスマホで探し当てた画面には、『ネクストブレイク! 期待の若手俳優たち』という見出しで友宏がインタビューされていた。 「これ、本当は速風さんがやる役だったでしょ。亡くなっちゃったけど……。本職モデルだし、舞台経験なかったから演技とかはよくわかんないけど、色気のかたまりっていうか、いるだけでブワッて空気変えるみたいな人だったでしょ。代役探すの大変だったみたい。これ、キャスト総入れ替えの再演で、私前のやつ見てたからわかるんだけどさ、狭間くん出ずっぱりの役だよ」  マミがあまりに興奮するので、なんだか申し訳なくなった。友宏も光司も、睦月にとっては普通の友達と実の兄だ。 「速風光司って、おれの兄。死んじゃったけど。で、友宏とおれ、いま一緒に住んでる」 「は?」  言った途端にマミは、わけがわからない、みたいな顔をした。  なぜだか居心地悪くなりながら友宏と光司の関係だけそれなりに伏せて事情を話すと、マミは難しい顔になった。他人の家の事情に何か言うわけにはいかない、みたいな顔。 「睦月……苗字変わったんだっけ」 「いまは速風睦月。高校卒業までは面倒だから母方の苗字で通してたけど」 「そういえば、お母さん再婚するとか言ってたね」  それからマミは無言でコーヒーを啜って、ぼそぼそ呟いた。     
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