1

36/54
前へ
/274ページ
次へ
「あのね、こんなこと聞くの、睦月を利用してるみたいでファンとしてずるいかなって思うけど、狭間くん……大丈夫なのかな」 「なにが?」 「すっごい痩せたでしょ。ブログの写真、顔色悪いのばっかりだし……狭間くんと速風光司さんて、すっごい仲よかったでしょ。この間のお別れ会の弔辞、ネットに流れてたんだけど、なんか……かわいそうで途中から読めなくなっちゃって」  全然大丈夫じゃないし、仲がよかったどころか付き合っていたし、友宏はずたずたのぼろぼろだけど、言わないほうがいいな、と思った。 「大丈夫だよ。痩せたのも役作りで、専属のトレーナーついてるって言ってたし」  睦月が言うと、マミは心配そうに首を振る。 「狭間くんてさ、稽古の様子とか結構マメにブログとかに上げてくれるんだけど、どんどん更新が減ってるの。相当努力家だって話色んなとこで見るし、きっと無理ばっかりしてるよね」  ブログは知らないがその通りだし、無理を重ねて自分を追い込む癖があるのは睦月にもわかっていた。この頃友宏はどんどん帰りが遅くなる。毎日ほぼ終電で帰って来て、死んだように眠る。それなのに眠りは浅いみたいで時々夜中に起きて、どうしようもないようなため息をつく。一日休ませたくらいではなにも回復しなかった。当たり前だ。友宏を追い込んでいるのは肉体の疲れだけじゃない。     
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

933人が本棚に入れています
本棚に追加