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 マミが人混みの中をどんどん進むので、睦月は置いていかれないように必死にならなければならなかった。劇場の外も中も人でごった返していて、女の子の匂いがする。関係者口を見つけ出したマミが係の人にチケットを見せるとあっさりホールの中に入れて、それでようやく人心地ついた。 「ミュージカルっていつもこんななの」 「今回は特別人多いと思うよ。見切れ席も機材席も解放してたし。速風さんから狭間くんにキャス変になってチケット欲しい狭間くんのファンが急に増えたの。当日券売り場もすごかったでしょ」 「友宏ってすごいんだね……」 「すごいんだよ! ファンサされたらみんな狭間くん大好きになっちゃうんだから!」  急に大声を出されて驚いた。そんなこと言われても家にいるときの友宏は普通のどこにでもいる男子だ。確かに顔は整っているし、鍛えているから体も引き締まっているけれど。 「私も今回だけは見に来られないんじゃないかと思ったもん……あ、誰にも招待券って言ってないからそこは大丈夫だから」  マミが色々言うのを聞きながら、睦月はまだ誰もいないステージを見た。友宏が言った通り二階センターブロックの一番前だったのでステージはよく見えた。  横でマミが緊張しているのを見ながら開演を待っていると、ブザーが鳴って急に大音量で音楽が流れ始めた。驚いている間に照明が落ちて、ミュージカルが始まった。     
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