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「いや……切るの面倒で伸ばしっぱなしなだけです。あと、ストレートパーマが多分落ちた」
友宏にも似たようなことを言われたな、と思いながら答えると、社長は興味深そうにこちらを見つめてきた。視線が無遠慮で緊張する。
「前に会った時より随分光司に似てるな、と思ってね。まだ俺の名刺もってる?」
「あ、持ってます、たぶん」
「念のためもう一枚渡しておこう。睦月君、うちのレッスンとか受けてみる気ない?」
「は?」
「君はおそらくこっち側、見せる側の人間だよ」
わけがわからず首を傾げると、睦月のポケットでスマホが鳴った。それをきっかけに社長は、じゃあいつでも連絡して、と人混みの中に消えた。名刺を持ったままぼうっと考えた。見せる側の人間ってなんだろう。
「ちょっと、睦月! 電話でてよぉ!」
ぼうっとしていたら人混みをかき分けてマミが帰ってきた。両手にパンフレットやその他色々なものを持っている。スマホを見るとマミからの着信が鬼のように溜まっていた。
「うわごめん、気づかなかった。それ半分持つよ」
マミ曰く「戦利品」を受け取って、立ったままマミがたくさん買ってきた小さい封筒を開封するのを見届けた。舞台衣装を着た友宏の写真がごっそり出てきて驚いた。
「あ、やったぁブラインド当てた! 勝った!」
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