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この眠そうな顔で、筋肉なんて全然ありません、みたいな薄くて細い体で、ふらふらだった友宏をベッドまで引きずって布団に押し込んだのだから、睦月は本当にわからない。あの日がなかったらきっと途中でぶっ倒れていた。細かいことはあまり覚えていないが、横になってる間に睦月が背中にくっついていたことだけはなんとなく記憶している。それに安心したのが不思議だった。けれど、睦月はきっとわかっていた。
さり気なさすぎてなかなか気づけないが、睦月は優しい。
「ありがとな。睦月」
言うと、睦月は眠そうな顔のまま首を傾げる。
「なにが?」
その顔が子供みたいでちょっと笑った。同い年なのに、睦月はたまにすごく幼い顔をする。
「睦月、誕生日いつ」
「一月。だから睦月」
「へえ。ずっと先じゃん」
「なんで?」
「……なんでもない」
睦月はもう一度首を傾げて、真面目な顔で「寝たら?」と言った。
誕生日に優しくしてもらったから何か返そうと思ったけれど、一月まで覚えていられるだろうか。
いまは一緒に暮らしているけれど、その時果たして自分は睦月と一緒にいるのだろうか。
考えて、ふと気づいた。
睦月が家で待っているということが、いつの間にか当たり前になっていた。
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