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「まあ、お前が楽ならそれが一番だけどな、うん。ちょっと待ってて、いま資料用意してくるから」
来客用のスペースに取り残されて、睦月は窓の外を見た。午後四時。制服の高校生たちが騒ぎながら下校している。
「お待たせ。取り敢えず模試の資料何個かと、参考書とかまとめたやつこれな。模試はほとんどスマホで申し込めるけど、これだけ書店申し込み。なんかあったらまた電話くれればいいから」
担任は机の上にいくつか大きい封筒を用意して、更に手書きで色々書いてくれた。
「ありがとうございます、お忙しいところ」
「使える物は使っとけ。卒業生なんてカード使えるの今のうちだからな」
渡された資料をリュックに入れていると、担任がぼそっと言った。
「お兄さん、残念だったな」
「……はい」
「ま、しっかりな」
「はい、どうも」
学生の時みたいに頭を下げて職員室を出た。
校舎を出ると雨が降っていた。出がけに傘を掴んで来てよかった。結構強く降っているから、傘なしだとずぶ濡れになってしまう。
傘を開いて気づいた。適当に掴んで来たからわからなかったが、これはたぶん睦月の傘でも友宏の傘でもない。
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